― 2026年度 徳島県ケアラー支援アンケート結果報告 ―

特定非営利活動法人machinowaでは、2026年10月、子育てをしながら、ほかの家族を支える役割も担っている方を対象にアンケートを行いました。
親の介護や見守り、家族の病気や障がい、心の不調への付き添い、お子さんの発達や不登校への対応。遠くに住む親の手続きや用事の代行。外国にルーツのある家族と、言葉や文化の違いを越えて暮らしを回していくこと。頼れる親族が近くにいない中での子育て。
「ケア」のかたちは家庭によってさまざまで、名前のついていないものもたくさんあります。このアンケートでは、そうした一つひとつを「ケア」として受けとめ、お話をうかがいました。
短い期間にもかかわらず、30名の方が回答してくださいました。選択式の設問だけでなく、自由記述の欄にたくさんの言葉を書いてくださった方も多く、一つひとつ読ませていただきました。忙しい毎日の合間に時間をつくってくださったこと、言葉にするのもしんどい経験を書いてくださったことに、心からお礼を申し上げます。
この記事では、その結果と、いただいた声をご紹介します。
「ケアラー」とは
ケアラーとは、病気や障がい、高齢などで手助けが必要な家族を、無償で支えている人のことです。介護だけでなく、見守り、通院の付き添い、手続きの代行、気持ちの支えなども含まれます。
子育て中の人がこうしたケアも同時に担っている状態は、「ダブルケア」とも呼ばれます。
ただ、実際の暮らしの中の「ケア」は、介護や看病だけではありません。
- 遠方に住む親の手続き、移動の手配、親族間の相談ごとを引き受けている
- 家族に外国籍・外国にルーツのある人がいて、日本の制度や手続き、学校・介護施設とのやりとりを一人で担っている
- 配偶者が単身赴任や長時間労働、夜勤で不在がちで、家のことを一人で回している
- 転勤や移住で徳島に来て、頼れる親族が近くにいない
- 双子など多胎児の子育てや、ひとり親として子育てをしている
- 自分自身も持病や体調の不安を抱えながら、家族を支えている
「介護というほどではない」「うちの家庭の事情だから」と思われがちなことも、毎日の負担として積み重なっています。この記事では、そうしたさまざまな形の支えを含めて「ケア」と呼んでいます。
回答してくださった方
- 回答数:30名(回答期間:2026年10月6日〜18日)
- 年代:30代 14名、40代 12名、20代 2名、50代以上 2名
- お住まい:徳島市 20名、鳴門市・小松島市・阿波市・石井町・神山町・板野町 各1名、その他の県内市町 2名、徳島県外 2名
- お子さんの年齢:未就学のお子さんがいる方が多く、妊娠中の方も4名いました

※市町村名は、公開に同意してくださった方のものを載せています。公開を限定された方のお住まいは「その他の県内市町」にまとめました。


ご家庭の状況(当てはまるものすべて)

半数の方が「頼れる親族が近くにいない」と答えています。家族に外国にルーツのある方がいるご家庭からは、「言葉や文化・考え方の違いで困ることがある」「多言語での情報提供や通訳の支援がほしい」という声もありました。人数としては少なくても、制度の情報が届きにくく、一人で抱え込みやすい状況です。
結果① 10人に6人が、いま子育て以外のケアをしている
子育て以外のケアをいま担っている方は、30名中19名(63%)でした。
ケアの相手は、
- 自分の親の介護・見守り(9名)
- お子さんの障がい・発達特性・医療的ケア・慢性疾患のケア(9名)
- 配偶者・パートナーの病気や心の不調、生活面のサポート
- 配偶者の親、祖父母、きょうだいのケア
- 不登校のお子さんの学校とのやりとり
- 遠方の親の手続きや用事の代行など、「介護というほどではないが、家族の生活を支えている」(4名)
など、さまざまです。親の介護とお子さんのケアを同時に担っている方もいました。
また、「以前ケアをしていた」方が8名、「今はしていないが、近いうちに必要になりそう」と答えた方も8名いました。いまは担っていなくても、多くの方にとって身近なことだとわかります。

1日あたりのケアの時間は、「日によって大きく違う」がもっとも多い回答でした。毎日決まった時間だけ、というわけにいかないのがケアの難しさです。

結果② 負担が「重い」と感じている人が4割
いまの生活で感じている子育てとケアの負担を、1(軽い)〜5(重い)でたずねました。

4か5と答えた方は12名(40%)。いま子育て以外のケアをしている19名に限ると、11名(58%)が4か5と答えています。
結果③ いちばんの困りごとは「休めない」こと
困っていること・しんどいこと(複数回答)

半数以上の方が「自分の時間や休息がとれない」と答えました。そして、「周りに理解してもらえない」「ケアラーだと気づかれにくい」がそれぞれ4割近くありました。大変さが外から見えにくいことが、しんどさを重くしています。
結果④ 相談先は家族や友人。「相談できる人・場所はない」も

困ったときに相談できる人・場所(複数回答)は、配偶者・パートナー(17名)、自分の親・きょうだい(11名)、友人・ママ友・パパ友(11名)が中心でした。
一方で、保育園・学校の先生、子育て支援センター・保健師、地域包括支援センター、NPOなど、支援の専門機関を挙げた方は少数でした。そして5名が「相談できる人・場所はない」と答えています。
結果⑤ 求められているのは「急なときの預け先」と「同じ立場の人とのつながり」
こんな支援があったら助かる、と思うもの(複数回答)

みなさんの声
自由記述には、たくさんの言葉をいただきました。ここでは、「個人が特定されない形で紹介してよい」とお答えくださった22名、全員の声をご紹介します。ご本人とわからないよう、一部を言い換え・要約しています。
重なって、押し寄せてくる
子どもが1歳半のとき、夫が手術を受けて在宅療養になりました。育児と家事と看護が重なり、心も体も疲れ切りました。引っ越してきたばかりで近くに頼れる家族もいなくて、ファミリーサポートや一時保育も使っていなかったので、休むことができませんでした。
出産と、夫の病気の治療の時期が重なりました。保育園に通いはじめた頃は子どもがよく熱を出し、有給を使い切って給料が減りました。私がフルタイムで働かなければならないのに、「小さいうちはお母さんがそばにいたほうが」「こんなに長く保育園に預けるなんて」と言われるのがしんどかったです。
母の心の不調が重くなり、入院が必要になりました。毎晩眠れず、仕事中に気づいたら寝てしまっていたこともあります。職場には家族の事情をうまく説明できませんでした。仕事に復帰したタイミングで今度は父が倒れ、子どもはまだ3歳。育児と家事に、介護と通院が一気に加わりました。父はそのまま亡くなり、相続の手続きもすべて自分たちでしました。展開が早すぎて心が追いつかないのに、事務の手続きはしなければならない。それがつらかったです。
生まれたばかりの赤ちゃんを育てながら、心の不調を抱えて働く夫を支えています。はじめての育児で右も左もわからず、家事も子育ても一人で抱えています。事情が事情なので、家族や友人にも簡単には話せません。赤ちゃんを連れて窓口に相談に行きたいけれど、準備や出かけ方がわからず、一人では心細いです。
子どもの睡眠の困りごとが続く中で、自分も心の不調を経験しました。同じ時期に、離れて暮らす親の体調への対応も重なりました。
親に介護が必要になりましたが、介護認定が実際の大変さより軽く出て、十分なサービスを受けられませんでした。子育ての合間に送迎などを続けていましたが、子どもが小さいからと遠慮して、親はなかなか私を頼ってくれませんでした。同じように、自分の親に頼れない子育て世代の方も大変だろうと思います。
「急に」助けてほしいときがある
上の子が機嫌を損ねて家を飛び出したとき、下の子たちを連れて探しに行けませんでした。育児の困りごとは前もって予約できません。急に助けてほしいときもあるんです。
義母が認知症で、ひとりで出歩いてしまい、警察から呼び出されたことがあります。子どもは話が終わるまで待っていられないし、夜は遅くなるし、本当に困りました。どうすればよかったのか、いまも答えが見つかりません。
実家から離れて子育てをしていて、自分が病気になったときに子どもを見てくれる人がいなかった。気持ちのうえで、とても厳しかったです。泊まりで子どもを見てもらえるところがあれば助かります。
見えにくい、わかってもらえない
家で大変なことがあっても、周りからは「わからない」「普通に見える」「よくあること」と言われます。自分では限界まで動いて疲れ果てているのに、まだがんばりが足りないのかと自分を責めてしまう。どこにも向けられない悲しさや怒り、無力感に襲われます。そんなとき、事情を知らない人との他愛のない会話に救われることがあります。
子どもの発達のことで、あちこちに相談に行ったり見学に行ったり、すべて私がしています。夫は仕事優先で、在宅で仕事をしている私の予定は後回し。それを理解してもらえない、協力してもらえない、我慢しなければいけない空気がつらいです。
県外に住む両親のために、飛行機の手配や、親族間のもめごとの相談まで、私が調べて対応しています。私も小さな子がいてフルタイムで働いていて、週末はワンオペ。限界を感じますが、周りの人の親はしっかりしている人が多く、誰にも相談しにくいです。
子どもの頃から、ずっと
子どもの頃、父に病気があり、夜中に救急車を呼んだり、母を支えながら病院に付き添ったりすることがよくありました。普通の家とは違うとわかっていたけれど、理解されないと思って友だちにも話せませんでした。大人になってからようやく、自分はヤングケアラーのような状態だったのかもしれない、と気づきました。いまは実家を離れて徳島で暮らしていますが、一人っ子なので、親に何かあったら自分しか支えられないというプレッシャーがあります。自分の家族も大切にしたい。その間で揺れています。
学生のときに母が倒れ、学業と家事、きょうだいの世話、父の心の支え、病院での付き添いを一度に担いました。好きだった部活もやめましたが、その理由は誰にも言えませんでした。言ってもわかってもらえない、言っても解決しない、わからない人に説明するエネルギーが残っていなかったからです。いまも、子育てをしながら母の介護と家族の家計を一人で支えています。ケアラーという言葉は、このアンケートではじめて知りました。
軽い認知症の母に、生まれたばかりの子の子守りを手伝ってもらいました。体は助かったけれど、気持ちはしんどかった。この子が大きくなる頃には、しっかりしていた頃のおばあちゃんの姿は見られないんだな、と。いま娘は3歳で、母の症状は進みつつあります。
「こうしてほしい」という声
子どもを預けて、泊まりがけで出かけたい。一人の時間がほしい。「まずは家族や知人に頼って」と言われない制度があれば、と思います。
訪問してくれる相談や、赤ちゃん連れでも気軽に寄れる相談の場がほしい。職場の休業制度やケアラー支援がもっと充実していれば、生活を立て直すのに本当に役に立つと思います。
介護の手続きが、施設に行かないと完了しない仕組みになっています。仕事と育児と介護をしていると、行く時間がとれません。オンラインで完結できる仕組みや、遅い時間でも対応してもらえる窓口がほしいです。
介護しているのに、保育園の入園の点数では十分に評価されません。でも、送り迎えと介護と仕事を、ほかにサポートがない中でフルタイムでこなすのは無理です。
両親がそろっていて一定の収入があると、子どもが多くても、発達に特性のある子や不登校の子のことで悩んでいても、転勤族で頼れる人がいなくても、支援の対象になりません。有給はあっても、職場の目を気にせず、いつでも取れるわけではありません。水面下でもがき、抱え込んでいる私たちは、どこで息をすればいいのでしょうか。
生活習慣とは関係なく発症し、毎日の治療が欠かせない持病があります。毎月の医療費が重く、大人には助成がないのがつらいです。先のことを考えると不安が大きいです。
子育てに集中できるように、経済的な負担を軽くしてほしいです。
介護認定は市町村によってばらつきがあると思うので、統一してほしいです。
何かが起きる前に、行政や地域が関わってくれたらいいのにと思います。いまは、何かあってからでないと動いてもらえない気がします。
いろいろなところに頼ったつもりでした。でも、同じ年代で同じような状況の人には出会えませんでした。どこに頼ればいいのか、どれが正解なのか、考える暇もないほど、毎日を回すので精一杯でした。
言葉にしなかった方の回答からも
自由記述の欄が空白だった方の回答からも、伝わってくることがあります。困ったときの相談先として「職場」や「友人」だけを挙げた方。まだケアは始まっていないのに、すでに「子育てと介護で窓口や制度がバラバラ」「手続きや書類が多い」と感じている方。いまはケアをしていなくても「自分の時間や休息がとれない」と答え、「同じ立場の人とつながれる場」を望む方。一つひとつのチェックが、言葉にならない毎日の重さを物語っています。
この声から、machinowaが受け取ったこと
1. 「ケアラー」は、自分でも気づいていないことが多い
「ケアラーという言葉をはじめて知った」「大人になってからヤングケアラーだったと気づいた」という声がありました。「ケアラーだと周りに気づかれにくい」と答えた方も4割近くいます。本人も周りも「ケア」だと思っていないから、支援の入口にたどりつけない。まず、「それはケアです」「あなたはケアラーです」と伝えることから始める必要があると感じています。
2. 困りごとは、予約できない
「急なときに子どもを預けられる場所」が、もっとも多く求められていました。病院からの呼び出しも、家族の急な不調も、子どもの体調も、前もって予約はできません。いまある制度の多くは事前登録や予約が前提で、「いま」助けてほしいときに届きにくいのが現状です。
3. 子育てと介護の窓口は分かれているけれど、生活は分かれていない
子育ての相談は子育ての窓口へ、介護の手続きは介護の窓口へ。でも、その両方を同じ一人が、同じ一日の中で担っています。子ども連れで行ける、まとめて相談できる、オンラインや時間外でも手続きできる。そんな仕組みが求められています。
4. 「同じ立場の人」に出会いたい
半数の方が「同じ立場の人とつながれる場」を望んでいました。「同じような状況の人に出会えなかった」という声も複数ありました。解決策を教えてもらうことよりも、わかってくれる人がいる、と感じられることが支えになる。私たちの居場所づくりの原点でもあります。
5. 「休む」ための支援を
いちばん多かった困りごとは「休めない」ことでした。介護や看護の手を増やす支援と同じように、ケアをしている本人が眠れる、一人になれる、泊まりで休めるための支援が必要です。
これから
いただいた声は、個人が特定されない形で、行政との勉強会・意見交換会でお伝えします。また、machinowaの居場所づくりや支援活動にも活かしていきます。あらためて、アンケートにご協力くださったみなさま、本当にありがとうございました。
特定非営利活動法人machinowa
この調査について
- 実施:特定非営利活動法人machinowa
- 方法:ウェブアンケート(Googleフォーム)
- 対象:子育てをしながら、親の介護や家族の病気・障がい、お子さんの発達や不登校への対応、遠方の家族や外国にルーツのある家族の生活の支えなど、ほかの家族を支える役割も担っている(担っていた・これから担う可能性がある)方
- 回答数:30名
- 回答者は呼びかけに応じてくださった方で、徳島県全体の状況を統計的に代表するものではありません。
- 自由記述は、個人が特定されないよう表現を一部変更・要約しています。「集計結果としてのみ使用」「紹介しない」を希望された方の回答は、集計の数字にのみ含めています。
